挑戦と進化のストーリー

社長が語る、未来の社会インフラとアイサンの挑戦

2025年8月27日

社長が語る、未来の社会インフラとアイサンの挑戦

話し手:代表取締役社長 加藤 淳

今回は、代表取締役社長に、中期経営計画の初年度となる55期を総括していただきました。会社の「今」と「未来」、そして経営者が考えるアイサンテクノロジーの役割についてお話を伺います。

Q. 中期経営計画ここまでを振り返っていかがでしょうか?

はい。55期はちょうど中期経営計画の初年度でした。数字的には、売上高60億円、営業利益3.5億円を目標にスタートしたのですが、まず「モビリティ・DXセグメント」の伸長が計画を大きく上回り、非常に手応えを感じています。この好調は、10年以上取り組んできたモビリティ関連事業が、いよいよ次のステージへと具現化してきた証ではないかと感じています。

一方で、当社の祖業である「公共ビジネスセグメント」も、久々に新製品を市場に投入することができました。この製品に対するお客様からの評価は非常に高かったのですが、売上高と利益の両面で目標には届きませんでした。これは今後の大きな反省点として認識しています。

しかし、両グループ、会社全体として良かったことは、今期、特に人材採用に大きなリソースを投入できたことです。結果として20人近くの優秀な人材を採用することができました。これは、中期経営計画の2年目、3年目に向けての大きな布石になったと思います。全体として、なんとか及第点は取れたかなというのが、率直な所感ですね。

Q. 今後のアイサングループにおける成長戦略についてどのように考えられていますか。

まずは、新製品やソリューションをタイムリーに市場へ投入していくことを軸としながら、アイサングループ全体の組織力のアップデートを図り、既存ビジネスの更なる深掘りと新規事業への飽くなき挑戦を推進してグループ全体の成長を狙っていきます。

Q. 公共セグメントは前事業年度計画未達、前期比でも減収減益でしたが、どのように捉えていますか?

新製品に対する市場評価が高かったにもかかわらず、数字が伴わなかった。これは、50年以上続けてきた祖業のビジネスモデルや、それを支える社員の意識が、新しい変化に追いついていない、いわば「硬直化」していることが最大のリスクであり、改善点だと認識しています。

やはり、新しい取り組みや新製品の投入を含めて、一つずつ確実に実行していかないと、次のステップに進むのは難しいことがはっきり分かりました。

そういう意味では、久しぶりに新しい営業所を開設したり、首都圏の事務所をアクセスしやすい場所に移転したりといった新しい挑戦が、そこで働く社員のマインドを高めるきっかけになったと感じています。

長く続いてきた歴史や、これまでの先人たちが築いてきたビジネスの仕組みに甘んじることなく、さらにブラッシュアップをかけ、新しい柱を立てていかなければなりません。「もっと挑戦していけよ」ということを、数字が示してくれたのだと捉えています。この中期経営計画の3年間でしっかりと改革を進め、次の成長につなげたいと考えています。

Q. 公共セグメントにおけるグループ会社とのシナジー効果は現れてきていますか?

55期はシナジー効果を出すために活動してきましたが、コミュニケーションが不足していたという弱点がありました。そこで、今期からは取締役や監査役をグループ会社に派遣し、密なコミュニケーションを取れる環境を整備しました。

その結果、56期の第1四半期には、グループ連携から生まれた第一弾のサービスソリューションを投入する予定です。これが一年を通じて動けば、一つ新たなシナジーの成果が見えてくるでしょう。急にすべてが変わるものではありませんから、丁寧に、着実に進めていかなければなりません。

Q.モビリティ・DXセグメントについて、前事業年度の大幅な計画達成や増収増益の状況をどのように捉えていますか?

ここは特に、自動運転の実証実験関連の案件が、年を追って倍々ゲームのように増えてきていることが要因です。

また、グループ会社のスリード、そして三菱商事様と設立したA-Drive社との「トライアングル連携」が非常にうまく機能しています。お互いが得意とする役割を認識し、連携が取れていることが、55期の大きな成果だったと感じています。

加えて、これまで事業を牽引してきた自動運転用の高精度三次元地図作成業務も、非常に堅調に伸びてきました。いよいよフローのビジネスから、継続的なストックビジネスへと切り替えていく最初の布石が打てたのかなと感じています。

さらに、新たに立ち上げた「都市空間DX」の分野では、初年度は手探りでしたが、下期には具体的なニーズが見えてきました。特にインフラ整備の分野では、点群データ活用の潜在ニーズが極めて大きいことが分かり、これも非常に大きな成果です。55期で、新たな事業分野の「種」は蒔けたと考えています。

Q. 自動運転の実用化に向けて、どのようなビジネスを目指していきますか?

各地で実証実験を行う中で、私たちが特に手応えを感じているのは「はたらくクルマ」の分野です。

バスや様々な作業車両など、大小を問わず人手不足による自動化ニーズが顕在化しています。特に大型バスならびに中型バス等のEV化にも投資を進めており、各自治体への提案活動を通じて手応えを得ています。

55期の経験を踏まえ、56期、57期では、この領域でいかにストックビジネスの形を構築していくかが大きなポイントとなります。

Q. 人財投資を中心に積極的な投資を行う初年度とのことでしたが、結果はどうでしたか?

先ほども少し触れましたが、特に55期は中期経営計画の初年度として、「採用を前倒しで一気にやる」という方針で臨みました。これは、3年計画の中で必要な人材を初年度に集めきるという戦略です。

採用担当の社員が熱意を持って取り組んでくれた結果、新卒・キャリア採用を含め、当初の予想以上の質と量で人材を確保することができました。これは非常に大きな成果だったと思います。

もちろん、採用したら終わりではありません。採用した人材を市場やお客様から信頼されるグループ社員として育成していくことが重要です。今までこうした教育は少し苦手な分野でしたが、今後は力を入れて、継続的な取り組みとして進めていきたいと考えています。

Q. 当前事業年度において自己株式取得を実施されましたが、資本政策についてどのようにお考えですか?

おかげさまで、当社の自己資本比率は75~76%と非常に高く、手厚い資本を持っている財務状況にあります。その中で、自己株取得は株式市場の声も踏まえて実施しました。

資本政策は、市場の反応や私たちが事業を進める上での投資資金の必要性など、流動的な要素が極めて高いものです。変化に鈍感にならないよう、常に機敏に動いていくことを基本的な考え方に据えています。グループ全体としてその状況を注視し、今後の変化に対応していきます。

Q. 株価水準に対し、どのようにお考えですか?

株価について私から申し上げることは難しいですが、高ければ高いに越したことはないですし、出来高が多ければ嬉しい限りです。

ただ、株価は市場によって作られるものですから、あくまで冷静に、客観的に見るスタンスを保ちたいと考えています。株価に一喜一憂しすぎると、本来会社としてやらなければいけない「成長」や「永続的な発展」が二の次になってしまう可能性があります。

もちろん、あまりにも市場と乖離した水準になった場合は対応が必要ですが、基本的にはその「機微」を捉えながら、適切な手を打っていきたいと考えています。

Q. 資本コストを意識した経営に取り組まれて変わったことはありますか?

会社全体のキャッシュフロー(営業、投資、財務)に対する意識が、社員全体に浸透してきていると感じます。

また、資金調達の手法についても、自社の規模や事業戦略、市場の反応などを総合的に見極めながら、どういった方法で資本を調達していくべきか、という意識が非常に強くなっています。

Q. 社長ご自身は、アイサンテクノロジーをどのような会社だと思われますか?

そうですね、アイサンテクノロジーには、個性的なメンバーが揃っていると感じています。年齢層も広がってきていますが、世代間の受け渡しは思いのほかスムーズにできており、風通しの良さは維持できていると感じます。

また、会社の役職を横に置いて、仕事上の課題や問題に「自分ごと」として積極的に取り組んでいこうというアクティブな姿勢が、当社のとても良い文化だと思います。

Q. アイサングループの社会的役割はどのようにお考えでしょうか?

現在、創業56年目となります。創業者から受け継がれた測量の世界、そしてそこに向けたソリューションを提供してきた会社として、やはり社会インフラの豊かな発展に貢献するという役割を担わなければならないと感じています。

戦後80年を迎え、日本の社会インフラは老朽化が進んでいます。この老朽化したインフラをどう維持管理していくかというとき、なくてはならないのが「測量」で正確な位置を測る技術です。「すべての物語は正確な位置から始まる」というのは昔も今も変わりません。この分野でしっかりと社会に貢献していくことが、アイサンテクノロジーの役割だと考えています。

Q. アイサングループの未来像についてお聞かせください。

未来像として、私たちが「測る」技術は大きく進化しています。かつては欲しいポイントを狙って計測していましたが、今や高精度なの三次元スキャナーが当たり前になり、膨大な点群データをどう活用し、三次元空間モデルをどう維持していくかがポイントとなっています。

そして、その三次元空間データを誰もが見て、利用できる環境が目の前に来ています。

アイサングループは、この新しい技術の息吹を活かしたソリューションを提供し、日本国土の発展に貢献していける、そんな会社であり続けたい。そうなるように、私たちも一生懸命取り組んでまいります。

Q. アイサングループを一言でPRしてください。

一言で言うと、社是である「知恵、実行、貢献」をしっかりと体現し、世の中に貢献しているグループです。創業者もこの社是を掲げて世の中への貢献を目指しました。この精神を大切にしている会社だと評価していただきたいです。

Q. 株主様、投資家の皆様へ一言お願いします。

創業56年目を迎え、売上高60億円、営業利益3.5億円と、まだまだ小さい会社ではあります。しかし、社員一同、個性豊かで、非常に元気があり、前向きなメンバーが揃った良い会社です。

特にこれからは、自動運転に必要なテクノロジーや、社会インフラを維持管理するためのテクノロジーをしっかりと整備し、お客様や市場にお届けできる力がある、と自負しています。

どうぞ、このアイサンテクノロジーグループを皆様方から応援いただけますよう、心よりお願い申し上げます。応援よろしくお願いいたします。

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