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挑戦と進化のストーリー
自動運転とDXで社会課題に挑む、モビリティ・DXセグメントの挑戦
2025年8月26日

話し手:佐藤本部長(モビリティ・DXセグメント)
今回は、モビリティ・DXセグメントを率いる佐藤本部長にインタビュー。前期の好調な業績を振り返りつつ、自動運転技術や高精度三次元地図の可能性、さらに「はたらくクルマ」の自動化や自治体DXといった社会課題へのアプローチについて語っていただきました。
Q. モビリティ・DXセグメントにおいて中期経営計画ここまでを振り返っていかがでしたか?
当セグメントには、三次元地図を制作する「3DMap事業部」、自動運転車両を構築する「Automotive事業部」、そして自動運転の社会実装を推進する「モビリティサービス事業部」などがありますが、基本的にすべての事業部で予算を達成し、前年比でも成長を遂げることができました。社員一人ひとりの頑張りもあり、非常に良い結果だったと考えています。
Q. 前事業年度の大幅な計画達成、前年同期比での増収増益という結果をどのように捉えていますか?
もちろん、社員一人ひとりが目的をしっかりと共有し、チームとして力を発揮してくれたことが一番の要因です。それに加えて、特に自動運転分野では「2027年までに全国各地で社会実装を目指す」という明確な政府目標が追い風となりました。その中で、私たちが持つ技術力や展開力、そしてパイオニアとして10年近く積み重ねてきた実績が、多くの自治体や事業者の皆様に認められた結果だと感じています。これまで蒔いてきた種が、ようやく花開きつつあると実感しています。
Q. アイサンテクノロジーが自動運転や高精度三次元地図に関わるようになったきっかけは何だったのでしょうか?
ご存知の通り、当社の祖業は測量や土木向けのソフトウェア開発・販売事業です。事業を拡大する中で、2009年に「モービルマッピングシステム」という車両搭載型の三次元計測システムを導入しました。当初はインフラ維持管理や自治体向けの地図データ作成を想定していましたが、2010年頃にある自動車メーカー様から「将来、自動運転で必要になるかもしれない」と、三次元地図についてお声がけいただいたのです。
正直、当時は何のことか分かりませんでしたが、お客様との共同研究を通じて、自動車が自動で動く未来が本当に来る。そして、そこには高精度な三次元地図が不可欠だということを学びました。さらに、その地図を作る技術が、私たちの祖業である測量技術と非常に親和性が高いという、思わぬニーズを発見したのです。そこから本格的に研究開発をスタートさせ、多くの自動車関連企業様に採用いただき、今に至ります。
Q. この分野におけるアイサンテクノロジーの強みはどこでしょうか?
私たちの強みは、自動運転の技術開発のスタートから、社会実装というゴールまで、そのプロセス全てを『一気通貫』で手がけられることです。
普通は、地図を作る会社、車両を開発する会社、運行を管理する会社、コンサルティングをする会社…というように、それぞれの専門プレイヤーがいますよね。業界も技術もバラバラです。私たちは、そういった異なる技術やノウハウを、すべて自社グループで統合して持っているんです。
ですから、高精度な三次元地図を作って終わりではなく、その地図を使って実際にクルマを動かす開発や、オペレーションまで責任を持って行うことができます。さらに言えば、それをどうやって世の中に普及させていくか、という社会実装のコンサルティングノウハウまで持ち合わせています。この、技術開発から社会実装までをワンストップで提供できるビジネスモデルは、国内では私たちだけだと自負しています。
Q. 自動運転の社会実装に向けた現在の課題は何だとお考えですか?
社会実装には「技術」「事業性」「社会受容性」の3つが必要で、どれか一つでも欠けては実現できません。
「技術」面では、昨年、長野県塩尻市で実現した国内初の公道での無人自動運転バスの定常運行をはじめ、着実に進化しています。また、「社会受容性」についても、ドライバー不足という深刻な社会課題を解決する切り札として、国民や政府からの期待は依然として高く、理解は進んでいくと考えています。
現在の一番の課題は「事業性」です。自動運転車両はまだ量産体制に至っておらず、一台あたりのコストが非常に高額です。しかし、バスのドライバーは2030年までに約3万人減少すると言われており、人手不足は確実にやってくる社会的リスクです。この喫緊の課題とコストを両睨みしながら、あと数年で事業性を成り立たせるストーリーを描くことが、普及への鍵になると考えています。
Q. 自動運転の実用化に向けて、どのようなビジネスを目指していきますか?
私たちの強みである「一気通貫のビジネスモデル」を最大限に活かしていきます。自動運転が普及すれば、私たちの地図や車両開発のビジネスも当然成長します。
たとえば、日本には1,718の自治体がありますが、「自動運転は必要ない」と考えている自治体は一つもないと思っています。理想を言えば、そのすべてに私たちの技術を導入していきたい。そして一つの自治体の中にも無数の道路がある。全国には約120万キロの道路がありますが、そのすべてに高精度地図を整備し、自動運転が可能な社会をつくる。まさに、夢のような話ですが、それが私たちの目指すところです。
移動に困る人をなくす、そのためのソリューションを展開していくことが、私たちの使命です。
Q. 自動運転における高精度三次元地図の活用は、今後も続くとお考えですか?
はい、必要性がゼロになることは絶対にありません。確かに、10年前に「10」必要だった地図情報が、技術の進化で「6」や「7」で済むようになることはあります。また、市販の乗用車に搭載されている高度運転支援機能では、比較的ライトな地図が使われています。
一方で、運転を完全に自動化する「レベル4」においては、地図が不要になるという議論もありますが、世界で実用化されているレベル4技術で、完全に地図を使わずに運用されている例は実はありません。求められる情報の密度は変わるかもしれませんが、少なくともレベル4において地図は依然として不可欠です。私たちは、公共交通、乗用車、後述する「はたらくクルマ」など、それぞれのニーズに合わせた多様な地図のラインナップを提供していきますので、今後も事業の柱であり続けると確信しています。
Q. 「はたらくクルマ」の自動運転化も進められていますが、どのような分野での広がりを想定していますか?
ゴミ収集車、運送トラック、除雪車、採石場のダンプ、空港の牽引車など、世の中には多種多様な「はたらくクルマ」が存在します。これらの分野でも、公共交通と同じく担い手不足が非常に深刻です。大雪が降っても除雪車の運転手がいない、といったニュースも耳にします。
こうした特殊車両は、空港の滑走路や工事現場など、一般道ではない閉鎖空間・専用道路で稼働することが多く、実は自動運転との親和性が非常に高いのです。すでに、車椅子サイズのものから何十トンという超大型車両まで、様々なお客様から自動化のご相談をいただいています。人手不足を背景にニーズはますます高まっており、公共交通と並ぶ大きな事業に成長していくと考えています。
Q. 「モビリティ・DXセグメント」の「DX」についてお伺いします。初年度を振り返っていかがでしたか?
これまで当社は、自動運転を中心とする「モビリティ」領域と、祖業である測量・土木という「まちづくり」領域で事業を展開してきました。実は、その中間には、まだ手つかずの広大な領域が存在します。
例えば、自治体が保有するインフラ資産の情報を地図データと連携させて行政業務を効率化したり、逆に自動運転車両が収集したデータをまちづくりに活用したりする、いわゆる「自治体DX」の分野です。
初年度である前期は、この中間領域を開拓するための投資フェーズと位置づけ、徹底的なマーケティングと顧客ヒアリングを行いました。国もデジタル庁を中心に注目している分野であり、中期経営計画の残り2年でしっかりとソリューションを形にし、世の中から必要とされる事業に育てていきたいと考えています。
Q. 最後に、モビリティ・DXセグメントとして、今後どのように社会に貢献していきたいですか?
日本の人口減少、特に労働人口の減少はあらゆる産業にとっての課題です。自動車産業も例外ではありません。私たちは、自動運転技術を社会に正しく導入することで、交通インフラの維持という社会課題を解決します。
さらに、そこから得られるデータを活用して行政業務の効率化を支援することで、私たちの存在価値はますます高まっていくはずです。事業を通じて社会課題を解決し、社会貢献につながると信じています。